一人一人の患者の苦しみを理解して、最良のケアを行う天使のような看護師になりたいというのは、看護師を目指す人がよく思い描く理想でしょう。
しかし、その思いを抱いて、看護学校や大学の看護学科に進学し、資格の取得のために勉強を始めると、理想とのギャップがあるとわかります。看護理論についての講義を受けて試験に合格するという形で、大半は理論の習得に時間が割かれているのが看護教育です。実践的な病院やクリニック、介護施設などでの実習期間もありますが、その期間は決して長くはありません。基本的には講義で学んだ古くから築き上げてきた理論に基いて、患者と接することが求められます。
個人を意識した医療を実践することも必要という話題は、講義でも取り上げられることはよくありますが、それはさておいて共通する理論に基いて、一様の看護を行うように教育が行われているのが現実です。理想として思い描いてきた看護師の姿とは大きなギャップがあって、この時点で看護師として働くのを悩む人も多いようです。
しかし、あくまでそれを基礎として学び、現場で実践を繰り返しながらギャップを埋めていこうと努力する人も少なくありません。個人を意識した医療を実践するためには、理論からの脱却が必要となることもあります。必ずしも教科書に書いてあることが正しいとは限らず、それに反した看護を行って、患者に感謝される場合もあるのです。そのレベルに達する前段階として、理論に基づく最低限の看護ができるように教育が行われています。